|
2008年のアメリカ大統領選挙は歴史に残る出来事となった。アフリカン・アメリカンのバラク・オバマ氏が長く激しい闘いのすえ、最終的に勝利した。この間のTV放送や新聞、雑誌に報道された大統領選指名獲得レースおよび大統領選挙のニュースを通じて、アメリカ社会の抱える人種問題という怪物の姿の一端が垣間見えたといえよう。
オバマ氏の力強い勝利演説のなかで、106歳のアン・ニクソン・クーパーさんの逸話は感動を呼んだ。奴隷制度時代のわずか一世代後に生まれた黒人女性である彼女が、困難な人生を歩んできたであろうことが想像に難くない。オバマ氏は、演説のなかでこう語った。彼女は、黒人解放の契機となったアラバマ州モントゴメリのバスボイコット運動も、警察がデモ隊を消火ホースによる散水で抑圧しようとした同州バーミングハムのホースも、参政権を求める黒人が州警察などに暴行を受けた同州セルマの橋も、知っているし、アトランタから来たキング牧師の「我々は勝利する」という言葉も聞いた。
ここに語られた、アメリカ社会における複雑な人種の状況、人種問題の歴史的展開などを理解せずに、アメリカ社会を知ることはできない。
マルコムX(1925-1965)は、父親アール・リトルと母親ルイーズ・リトルの黒人解放運動への情熱を引き継いだ。盗みの罪で服役中、ムスリムに入信する。出獄後、急進的黒人解放運動の指導者となり、貧しく抑圧された黒人層の支持を得る。後に、アフリカの黒人との連繋を模索し、人種問題を広く人権問題として把握しはじめたときに銃弾に倒れた。この伝説的黒人解放運動指導者の人生は、後に『ルーツ』を著すアレックス・ヘイリーが『マルコムX自伝』(1965)にまとめ、1992年には、スパイク・リー監督により映画化(『マルコムX』)されている。
本書は、マルコムXの生涯と思想を探ってアメリカの人種問題理解を深めるために好適な一冊である。
内容は、第一部、研究者による11の論考、第二部、項目・人名事典からなる。マルコムXの生涯と周辺の人物、公民権運動、暗殺、パン・アフリカニズム等、515の項目を含む。
|